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インタビュー vol.3 したたかな植物たち 前編 植物生態学者 多田多恵子さん

「食うぞ!」、「食われまいぞ!」植物と動物の果てしない戦い

植物はじっとして動きません。ただただ踏まれたり折られたり食べられたりと、動物からみると受け身な生き方に思えます。動物と違い、敵に襲われても走って逃げるわけにもいきません。でも、植物は動物とはまったく異なる、彼らなりの「防衛術」を持っているのです。

中でも植物が広く活用しているのは化学物質による防衛(化学防衛)です。植物の成長には必要ないけれども、動物には毒だったり有害であったりする化学物質を作り出すことで、敵に食べられにくくしているのです。とはいえ、動物たちもそう簡単に引き下がるわけにはいきません。なんとかして防衛物質を克服して食べられるようになったものが現れてきます。こうした攻防は果てしなく続き、その結果、植物も動物も互いに相手に対抗して進化し続けることになります。このような進化を「対抗進化(たいこうしんか)」と呼びます。

「食うぞ!」と襲ってくる動物たちに対して、「食われまいぞ!」と身を守る植物たち。両者の間には、日夜、果てしない戦いが繰り広げられています。

化学物質を武器に戦う植物たち

精油成分がつまったカプセル

ミカン類の葉っぱを透かしてみると、“星空”が見えます。この葉っぱに無数に広がる点々の正体は、「油点」といって、香りのある精油成分がつまったカプセルのようなもの。葉っぱを揉んでみると、精油成分が揮発して、みかんと同じく爽やかな良い香りが立ち上ります。この精油成分が、多くの虫を寄せ付けない防虫効果をもたらしています。

シュウ酸を持つ「カタバミ」

カタバミかムラサキカタバミの葉をよく揉んで、出てきた汁を10円玉にこすりつけてみましょう。すると、あら、不思議。10円玉はピカピカに。葉を噛んでみると酸っぱい味がします。カタバミの仲間は体の中にシュウ酸を蓄えており、酸による化学反応により、表面の酸化銅が還元されて新品同様になるのです。 なぜシュウ酸をもつのでしょう。動物がカタバミの葉を大量に食べてシュウ酸を摂りすぎると、シュウ酸が血液中のカルシウムイオンと結合して不溶性の結晶になり、腎臓結石の原因となり、健康を害してしまいます。葉を食べさせないための防衛なのです。

ゴムの成分を持つ「タンポポ」

タンポポの茎や葉を切ると白い液体が出てきます。この液体をずっと触っていると、手がベタベタとくっついてきます。実はこの液体には「ラテックス」とよぶゴムの成分が含まれていて、酸素に触れると固体に変化します。つまり食べようとする虫の口を固めてふさいでしまうというわけ。ちなみにこのゴム成分、茎が傷ついたときには“水ばんそうこう”の役割を果たし、病原菌から身を守ります。

  • ミカンの葉の油点ミカンの葉の油点
  • ムラサキカタバミムラサキカタバミ
  • タンポポの乳液タンポポの乳液

コラム・特集

Profile

多田 多恵子(ただ たえこ)
植物生態学者
東京大学大学院卒。理学博士。植物の生き残り戦略、虫や動物との関係を、いつもワクワク追いかけている。著書に『葉っぱ博物館』『街路樹の散歩みち』(山と渓谷社)、『したたかな植物たち』(SCC)、『種子たちの知恵』(NHK出版)など多数。大学でも一般でも、発見が相次ぐ観察ツアーが好評を博している。