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環境カオリスタが行く!「ホリスティックトラベル」のススメ vol.30 沖縄・八重山諸島編(1)

南国植物、サガリバナは亜熱帯の夜に花咲く

夜に向かってつぼみをふくらませ、暗くなってから花を開かせるという亜熱帯の植物、サガリバナをご存知ですか?花が開くとあたりに芳香を放つのだそうです。この植物を知ってから、どんな風に咲いていて、どんな香りがするのか、一生に一度は、実際に見てみたいと思っていました。

木の幹からツルをのばし、その先にいくつもの花を咲かせるサガリバナ。水辺に垂れ下がる姿は近寄ってみるとブラシのようにもみえるけれど、遠目に眺めるとフジのよう。サワフジという和名がつけられていることに納得。

サガリバナの開花時期は、6月下旬から7月中旬まで。しかも1つの花につき花の命は一夜のみ。翌朝には花を落としてしまいます。潮汐や風の様子、台風の進路など、自然環境に左右されるので、必ずしもインターネットなどで見かける宇宙空間のような景色を見られるとはいえず、幻の花とも呼ばれています。

幻の花というならば、なおのこと実物を見てみたい。行くぞと気合を入れて、沖縄の梅雨明け宣言と同時にまずは八重山地方の空の玄関口となる石垣島にひとっとび。ツアーの前夜までに石垣島から船でサガリバナツアーが盛んな西表島に移動します。

サガリバナは奄美大島よりも南の亜熱帯の水辺に植生している。朝に向かって花が落ちるため、香りが立つ時間帯を狙うなら暗いうちに出かけなくてはいけない。

西表島は島のほとんどを山地が占めているため、亜熱帯の森から海の中までも豊かな生態系があることで知られています。イリオモテヤマネコをはじめとする八重山固有の希少な動物、植物は天然記念物として保護されています。

特に生態系の宝庫といわれるのは、一滴の水源から湧き出た水が川となり、海へと注ぐ河口域。1日2回、干満で海水や淡水が混じり合うため、多種多様な生物が息づいています。干潮時には、小さなハサミを持ったカニ、シオマネキがあちこちに出現するといいます。けれど、ツアー当日の朝は、干潮から満潮に向かうとき。湾から河口に入る際は潮位が低く、ぎりぎりカヤックが出せるくらいなのでシオマネキには出会えません。船底が地面についてしまうこともありましたが、なんとかパドルを漕いで前に進めたので、それはそれでよしとしましょう。下げ潮のときは歩いていかないといけないから大変なのです。

「上げ潮の時間にあわせてツアーを出せると、潮の力も手伝ってみんな早く漕げるんですけど、今は下げ潮の時間なうえに向かい風が吹いているから漕ぐのが遅くなりますね」。エコツアーガイドの出戸 津雲(でと つくも)さんは、この時期のガイドはサガリバナのツアーがほとんど。西表島のサガリバナツアーは早朝に出て朝に解散するものが多いのですが、出戸さんは連日のように12時間たっぷり遊ぶコースをガイドするので体力を使います。 「せっかく西表まで来たんだから、ジャングルを楽しんでいってほしいじゃないですか」と出戸さん。そういう彼は、学生時代に西表島に来て濃密な自然の魅力に惹かれ、そのままガイドとして島で働き始めたといいます。

16年前、エコツアーに参加した時に比べ、マングローブの根がむきだしとなって倒れているところが目立つ。どうやら、台風をはじめ動力船の引き波などさまざまな環境負荷によって少しずつ泥土が海に流れていっているとのこと。出戸さんたちガイドは定点観測をしながら、どのように島の資源を守っていくか模索している。

島の西側、白浜からカヤックを漕ぐこと20分。湾から仲良川(ナーラカーラ)に入り、両脇の風景がマングローブ林に変わりました。西表島には、日本の約70%のマングローブ林があり、国内で発見されている7種のマングローブ植物すべてを見ることができます。
「ピロロー、ピロロー」とアカショウビン(注1)の声が聞こえ始めました。あちこちで聞こえる鳴き声は、カップルで呼び合う合図。出戸さんもアカショウビンになりきって声をかけます。

「あ、キンバトが行きましたよ!」
望遠レンズをつけたカメラを構えてみると、カラフルなリュウキュウキンバト(注2)が木と木の間をすり抜けて彼方へ。天然記念物だらけのマングローブの林で自然観察するならば、いっときたりとも気が抜けません。 「ここにはカニやヤドカリなど、鳥の好きなエサがたくさんありますから、まあ、また見られますよ」。

注1 アカショウビン
鮮やかな朱のクチバシと体の色が美しいカワセミ科の鳥。その姿から“火の鳥”ともいわれる。西表島は繁殖地として知られており、頻繁に見ることができる。
注2 リュウキュウキンバト
天然記念物リュウキュウキンバトの羽色は、ビロードのような光沢感のある緑。常緑広葉樹のジャングルの中に棲み、速いスピードで飛んでいく小さな鳥なので見つけるのが難しい。

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Profile

朝比奈 千鶴 (あさひな・ちづる)
環境カオリスタ、トラベルライター

自然や文化を体感することで旅人があらゆるものにつながりを実感する旅を「ホリスティックトラベル」として提案している。また、これまで国内外問わず「人びとの暮らし」を取材してきた経験から心地よい暮らしを提案するレシピ本やイベントなどのプロデュースも行う。CS旅チャンネル「ホリスティックな週末」では、ナビゲーターを務めた。