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環境カオリスタが行く!「ホリスティックトラベル」のススメ vol.31 沖縄・八重山諸島編(2)

石垣島の力強い植物とともに、生きる

八重山諸島には、夜に花開くサガリバナとは反対に、真夜中は花弁を閉じている白い花があります。それは、八重山料理に欠かせない島コショウ、ピパーチ。ピパーツやピーヤシとも呼ばれているその植物の和名は、ヒハツモドキといいます。八重山でそばを食べるときには欠かせない調味料なので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。

石垣島でハーブスクールを開く環境カオリスタ、嵩西 洋子(たけにし ようこ)さんを尋ねてみると、よかったら、と石垣島のハーブを使った料理を出してくれました。
「この赤いのがピパーチ。ソースに混ぜて野菜と和えて食べるとピリッとしておいしいのよ」。
パパイヤとカジキを酢味噌で和えたムンナイ(和えもの)に、甘くてピリリと辛いピパーチソースが効いています。すりつぶしたピパーチは、中華のスパイスで使われる八角のような香りがしました。

「島の家の石垣やブロック塀に這っているツルがあるでしょう?ピパーチの赤い実は家庭の常備薬として使われてきたんだけど、いざ栽培するとなるとなかなか難しいの」。
日本列島の最西端、同じ八重山諸島の与那国島で生まれ育った嵩西さん。幼い頃から親しんできたピパーチなどの植物の魅力を伝えるべく、石垣島胡椒園を営み、ピパーチを生産しています。

パパイヤとカジキの味噌ムンナイは、食欲をそそる酢味噌と酵素たっぷりのパパイヤのコンビが嬉しい夏の一皿。すりつぶしたピパーチの実の他赤ジソやシークワーサーなど島のハーブや果汁も効いている。

ハーブスクールの室内には、嵩西さんが描いたハーブの大きなポスターが貼られ、日々、細部に渡って植物を観察・研究されている様子が伝わってきました。
おばあさまが薬草に詳しかったこともあり、幼い頃からハーブや摘み草を取り入れた生活が日常だった嵩西さんですが、はっきりと植物に不思議な力があることを感じたのは、人生でもっとも辛い出来事があった時だったといいます。

「1998年に交通事故で娘を亡くしたんです。しばらく、涙も出ないくらい無気力な時間を過ごしていましたね。でも、あるとき、みつばちの音がしてその先に庭のローズマリーの花が咲いているのが目に入ってきたんです。無意識に花を摘んで水につけて放っておいたのですが、のどが渇いたのでふとそれを手ですくって飲んでみたら、ああ、おいしいという感覚が戻ってきたんです。同時に、涙をこらえていた我慢の塊のようなものがふっと溶けて、急に涙がぽろぽろと流れてきて……」。

機内誌や新聞などに石垣島のハーブのイラストエッセイを寄稿している嵩西さんは、石垣島の薬草や摘み草の魅力を伝える伝道師的役割を担ってきた。

その後、ずいぶん経ってから、植物の持つ力を水に移したフラワーレメディのことを耳にし、自分と同様に植物の力を感じている人が他にもいるのだということを知ったそうです。

平成27年に石垣島で開催された「全国ハーブサミット石垣市大会」では、身の回りに寄り添う特用植物のことを「命草(ヌチグサ)」と呼び、八重山独特の命草を利用した料理レシピなどが紹介されました。その中には、嵩西さんの八重山に植生するハーブをつかった多くの命草レシピがあります。
沖縄では、古くから食のことを薬(ヌチグスイ)といい、心身を癒す薬として食べ物を選ぶ習慣がありますが、まさに嵩西さんは自身の人生のなかで植物やハーブが薬となり、命草になることを実感しながら暮らしを営んでいました。

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Profile

朝比奈 千鶴 (あさひな・ちづる)
環境カオリスタ、トラベルライター

自然や文化を体感することで旅人があらゆるものにつながりを実感する旅を「ホリスティックトラベル」として提案している。また、これまで国内外問わず「人びとの暮らし」を取材してきた経験から心地よい暮らしを提案するレシピ本やイベントなどのプロデュースも行う。CS旅チャンネル「ホリスティックな週末」では、ナビゲーターを務めた。