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フランス、中国と並んで、世界三大宮廷料理のひとつとされるトルコ料理。トルコは、古くから東西交易の要所であり、クロスカルチャーな食文化が育まれたことも理由のひとつとされている。写真はホームステイした家で出されたもの。
近年、観光地として人気が急上昇中のトルコ。
トプカプ宮殿やブルーモスク、アヤソフィアなど
歴史的な見どころもたくさんありますが、私の興味は、「食」。
それもレストランの食事ではなく家庭の食事に興味がありました。
食卓に触れると、その国の文化や今の背景が見えてくるので
簡単に参加できる数日間のホームステイツアーは
手っとり早く異文化に触れる方法ともいえますね。
そんな現地にある「生」の食事情に触れるため、
イスタンブールのアジアサイド・エレンキョイ地区に
お住まいのサリハ・バイェルさんの家を訪れた私は
正直、その豊かな暮らしぶりに驚きました。
2000年以降、トルコのGDP(国内総生産)は、ぐーんと右肩あがり。
急速な経済成長を遂げる前から銀行で総合職として働いてきたサリハさん。
お陰さまで、現在は悠々自適の一人暮らし中。
大学で英語を教えている娘のメルべさんの生徒や友人など
さまざまな国の人をホームステイさせているので
海外からのお客さんは慣れているとのこと。
お酒もワインを少々?たしなみます。
イスラム色の強いストイックな暮らしぶりを勝手にイメージしていた私は、
まず彼女の家に着いて出されたお手製の豪華なチョコレートケーキで
固定観念の壁を崩すこととなったのでありました。
到着早々、家庭料理を習いたいとお願いしたところ、
「トルコでは手料理でお客さんをもてなすのが流儀なのよ。
まあ、作っているところを見てみなさい」とキッチンへ。
すると、これから調理しようという旬の野菜や豆、
パンなどがキッチンテーブルの上に山積みになっていました。
調理している様子を見ると、惜しげもなくた~っぷりと
オリーブオイルを使うのがサリハ流。
しかも、使っていたのは最高品質オイルのスズマ。
「トルコでは、冷たく食べるものには最後にオリーブオイルをかけるの。
温かいものにはひまわり油をかけるのよ」
とレモンを1個分まるまる絞ってスズマとともに
冷製金時豆と野菜の煮込み、バルブンヤに回しかけました。
なるほど、オリーブオイルをたらすと
材料に肉を使っていなくてもしっかりとした味になります。
トルコはオリーブの産地としても知られており、オリーブオイルの種類も豊富。
ナチュレル(エキストラヴァージンオイル)・ラフィネ・リビエラの3段階のオイルがあり、
ナチュレルのなかにもさらに2段階あるなかから、もっとも酸の比率が低く、
自然製法で作られた最高品質オイルがスズマです。
「トルコでは病気になるとまずスープやヨーグルトを飲むんだけど、
場合によってはオリーブオイルも飲むわね」
医食同源の考え方は、なんとトルコでも浸透していました。
「健康であるためには食べ物が大事よ。土地でとれる旬のものを食べないと」
サリハさんは地元の旬の食品や伝統食が体に良いとされる、
身土不二の考え方も取り入れています。
暮らしの折々に食材を豊富に活かせるのは
彼女の環境が比較的裕福だということもありますが
食糧自給率100%といわれるトルコの食糧事情も影響しているのでしょう。
赤、緑、白、茶色などカラフルな色彩を放つ食卓からは、
オスマン帝国時代から混血を繰り返し
多国籍文化が混ざり合って完成した豊かな食文化が伝わってきます。
しかもフードマイレージのことを考えるととても優秀で
国内で生産されたものしか出されていません。
それでも、ここ10年は外資系ファーストフードの進出が目覚ましく、
子供たちはハンバーガーに夢中で伝統的な料理に対する関心が薄れてきているのだとか。
また、地方で農業に従事する若者たちは概して貧しく、
魅力的な働き先がある都市部に出て行くケースが増加傾向にあり、
今後、食糧自給率が保たれるかはわからないとのこと。
さらには、国内の農業を守る政策が不十分なのだそうです。
そうはいってもまだまだ食材豊富なトルコでは、
ふだんから友人や家族と食事をするのは
チャイ(お茶)やコーヒーを飲むのと同じくらい
大切なコミュニケーションのひとつで
食卓を囲んでその日あったことを話すのが日課なのだそう。
特別な日は家の女性が食事を作ることになっており、
外食は日常的ではないといいます。
「お母さんのご飯を食べながらみんな話に参加するのが食事の時間。
ひとり暮らしでも、誰かが誘ってくれるから引きこもる人なんていないわよ」
この考え方は経済的に豊かであろうがなかろうが、
トルコでは一般的に浸透していると
通訳にきてくれたトルコ在住のエミさん、アキさんもうなずきます。
「日本人の私にとってみれば、静かにひとりになりたいときもあるけど、
寂しいんじゃないかとほうっておかないのがトルコ人の気質なのよね」(エミさん)
現在、サリハさんはひとり暮らし。
けれども、週に一度はメルべさん家族が食事に来るのと
日常的にマンションや趣味の友人たちと
頻繁に食事をしたりお茶を飲んだりしているので寂しさを感じてはいません。
ふだんの互助関係をつないでいるのも
「食」の役割なのでした。

サリハさんの下の階に住む方がブドウの葉でお米を包んだトルコを代表する料理、ヤプラックサルマスを差し入れ。彼女の地方の料理だから、私のために頼んでおいたというサリハさん。こんなやりとりも日々のコミュニケーションがあるからこそ。
合計で3日間と短い期間のホームステイでしたが、
朝から晩までサリハさんと一緒にいて
何か困っていないか、異国で不十分なことはないかと
細やかに気をかけてくれる母性愛の強さを感じました。
実はこのホームステイ(2011年3月)から帰ってきてすぐに
トルコ婦人協会連盟からお誘いを受け、
宮城県岩沼市にトルコ料理のドネルケバブ600名分の炊き出しに出かけた私。
「震災で元気のない人たちにトルコ料理でスタミナを!」
と、まだ余震の続くなかも出かけていく
勇敢なトルコ女性たちにサリハさん同様の母性愛を重ねるとともに
長い歴史のなかで脈々と紡がれてきた食卓の在り方が
今後も続いていくことを願ったのでありました。
読者のみなさんへ―トルコ土産
サリハさんのおいしいレシピ
茄子のひき肉詰め カルヌヤルックの作り方
材料(上記のフライパンの量)
ナス 7個
牛ひき肉 300g
タマネギ 1個
トマト 煮込み用2個 /飾り用1個
シシトウ(ピーマンでも代用可) 4個
パセリ 少量
オリーブ油、塩、コショウ、砂糖 適量
- ナスは皮むき器でところどころタテ向きに皮をむき、塩水に浸す。肉を詰める面は大き目に皮をむき、平らにしておくこと
- トマトは皮をむく
- フライパンにたっぷりとオリーブ油を注ぎ、その中に塩を少々入れる
(そうすると、ナスが必要以上に油を吸わないのだとか) - 水気をふいたナスをフライパンに入れ、オリーブ油で5分くらい揚げて(油で煮るような感じ)ひっくり返す
- 別鍋でみじん切りにしたタマネギを炒める
- 5に牛ひき肉をいれて、粗く切った煮込み用のトマト、みじん切りのパセリを入れて塩コショウと砂糖少々を入れて味付けをする
- キッチンペーパーの上で油を切ったナスの中央部にタテに長く切り目を入れ、そのなかに6を詰める
- フライパンまたは鍋に7を入れ、ナスの上に生のシシトウとスライスした飾り用のトマトを飾り、砂糖をスプーンに1杯、水をひたひたに入れて沸騰したら、火を小さくして20分程煮込む。クタクタになりすぎないように塩梅をみてください。
●ポイント
Tesekkur ederim!
Saliha&Merve / Emi Asahina / Aki Yasuo / Mario Ito
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- 朝比奈 千鶴(あさひな・ちづる) 環境カオリスタ、トラベルライター、編集者
- 旅行誌や機内誌、女性誌などに旅のエッセイやコラムを寄稿。自然や文化を体感することで旅人があらゆるものにつながりを実感する旅を「ホリスティックトラベル」として提案している。また、これまで国内外問わず「人びとの暮らし」を取材してきた経験から心地よい暮らしを提案するレシピ本などのプロデュースや企画編集も行う。
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