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豊受大神宮(外宮)
「伊勢に行きたい、伊勢路が見たい、せめて一生に一度でも」と伊勢音頭で歌われているように、古くから人々の憧れの地であった伊勢神宮。正式には「神宮」と呼び、皇大神宮(内宮)と豊受大神宮(外宮)を中心に14の別宮、109の摂社・末社・所管社を合わせた125社から成り立っています。日本人の総氏神・天照大御神を祀る伊勢神宮は、いわば日本の守り神と言える存在です。その誇り高き姿からか、伊勢神宮は昨今のパワースポットブームのなかでももっとも人気のある聖地。なんと2010年の参拝者数は880万人を超え、記録が残る1895年以降で最多を記録したそうです。そんな時代を超えて人々に愛されてきた伊勢神宮への参拝は、内宮の先に茂る深い森を見た瞬間に、背すじがピンと伸びる思いがします。
内宮の表玄関すぐに見えるのは五十鈴川に架かる宇治橋。20年ごとに架け替えられるこの橋は、09年11月に架け替えが終わったばかりで、渡るとほのかに檜の香りが。さらに歩みを進めると、
五十鈴川に架かる宇治橋神の森の緑は目にまぶしく、五十鈴川は涼やかな音を立て、参道の玉砂利は身体に心地よいリズムをもたらします。 奥へ進むほどに五感が研ぎ澄まされていくようです。そして鉾杉が並ぶ参道に出ると、樹齢数百年にも及ぶ杉の巨木が、天に向かってすっくとその太い幹を伸ばしていました。うっそうとした木の間から太陽の光が射し、胸がすくような杉の香りが漂う参道は、なんとも神秘的な空間。そして参道を抜けたところにある石段をあがると、いよいよ御正宮の姿に出会うことができます。意外なことに御正宮は茅葺き屋根に素木造りの社殿と、きわめてシンプルな佇まい。ただそれだけに力強い自然の存在と、その自然に宿る神々しい力が、とても鮮やかな印象として心に残りました。

右)御正宮前の石段

多くの飲食店やお土産店が並ぶ「おかげ横丁」
内宮を出て少し歩くと見えてくるのが、多くの飲食店やお土産店が並ぶ「おかげ横丁」。おいしそうな香りがあちらこちらから漂ってきます。それもそのはず。かの『万葉集』に「神風の伊勢の国は山も河も美味しい御食つ国」と書いてあるほど、古くからおいしい食べ物があふれることで名高い伊勢。気候風土に恵まれ、山の幸、海の幸ともに豊富なことから「美(うま)し国」とも呼ばれています。代表的な名物として知られているのが、フワフワの食感が特徴の「伊勢うどん」。伊勢参りに来た旅人の疲れた胃にも優しいようにと、柔らかいうどんでもてなしたことが伊勢うどんの始まりだそうです。そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、誰もが知る伊勢名物「赤福餅」。今から300年も前に誕生した赤福餅は、五十鈴川の清流と川に沈む白い小石をモチーフに作られているそうです。本店でいただく赤福餅は、ふんわりと柔らかくとっても美味。
上) 伊勢うどん
中)下) 赤福餅そのやさしい甘さは300年間ずっと、お伊勢参りで歩き疲れた人々の心身を癒してきたのでしょう。その土地のグルメには、それぞれに歴史が紡ぐストーリーがあることを体感できた「おかげ横丁」でした。
伊勢神宮には、「商売繁盛」や「縁結び」などの願い事を叶えるような具体的なご利益はありません。にもかかわらず、時代を超えて多くの人々の心をつかみ続ける理由。それはやはり自然の力によるところが大きいのではないでしょうか。伊勢神宮の木、水、土、風に触れたときに現れる思い、それは「感謝」でした。鉾杉の間からこぼれる光をまぶしく思うこと、檜の香りを好ましく思うこと、川のせせらぎを心地よく思うこと、そのすべてに感謝したくなるのです。それは心が解きほぐされるような、不思議な感覚でした。信仰心の深さには個人差があります。目に見えないモノを信じる、信じないは人それぞれで、どちらが正しいといった判断はできません。ただ伊勢神宮の凛とした唯一無二の美しさからは、きっと誰もがパワーをもらえることでしょう。
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